Pac-man


地デジ完全移行までのリミットが迫る2010年。今から30年前に誕生したのが「パックマン」です。今年生誕30周年を迎えたパックマンゲームデザインをここで考えてみたいと思います。
【概要:ルール】
黄色い円形キャラクタ「パックマン」がプレイヤー。パックマンを操作し迷路内に散らばったクッキーをモンスターに追われながら全て食べつくす。モンスターに触れるとミスとなり残機が1つ減る。残機がなくなるとゲームオーバー。迷路内にあるパワーアップえさを取ることで一定時間モンスターに触れると倒すことができる。倒されたモンスターは巣まで戻り、また、プレイヤーを追いかける。
【詳細:プレイヤー】
1ピース食べた後のピザをヒントにデザインされた円形のグラフィックは、人が口を開けている様のデフォルメにも見え、画面に点が表示されていると、その点を食べるゲームなのだとプレイヤーは画面を見るだけで理解できる。このように形と機能がつながっており、生態学ゲームデザイン*1を満たしている。
【詳細:モンスター】
赤、ピンク、オレンジ、青の4種類が基本として登場する。プレイヤーに対して攻撃は行わないが、それぞれのアルゴリズムでプレイヤーに接近してくる。それぞれの追跡アルゴリズムは、「プレイヤーを追いかける」、「プレイヤーの何地点か先を予測して移動する」、「プレイヤーと点対称の位置へ移動する」、「自由に移動する」、の4種類である。ランダム要素がなく、プレイヤーの行動によってモンスターの行動も変化するため、プレイヤーはモンスターの行動を操作、パターン化し攻略を行うことができる。


【考察1:直感的なゲームデザイン
 プレイを開始すると、パックマンは自動的に動き出しドットを食べて行く。この間1秒足らず。この瞬間プレイヤーは目的を理解する。10秒経過する。モンスターがこちらへ来る、触れるとパックマンが死んでしまった。こいつらは敵である。「モンスターから逃げ、ドットを食べればいい。」20秒かからずに目的、ルールを理解したことになる。スーパーマリオブラザーズゲームデザインが秀逸であることに、ステージ1−1の構成が挙げられれていることが多い。これはプレイヤーが何をすべきか、何が出来るかを無意識のうちに気づかせるマップ構成になっているからである。パックマンも同様にプレイ直後にプレイヤーが理解出来る。
【考察2:モンスターとプレイヤーの関係】
 プレイヤー(プレイキャラクタではなくゲームをプレイする人)がゲームをする目的は時間の効率化という考え方がある。プレイヤーは魔王を倒したいわけでもなく、お姫様を助けたいわけでもない。それらをいかに効率よく成し遂げるかに力を注ぐ。プレイヤーは10%の確率で5分でクリア出来る方法か、90%の確率で20分かかってクリア出来る方法を取捨選択する。その選択の揺れ幅がプレイヤーの選択出来る範囲になる。つまりパックマンではいかに早くモンスターを避けながらクッキーを食べ尽くすかがプレイヤーの目的である。モンスターを避けるためにプレイヤーが取れる行動はモンスターがいない方へ逃げることだけだが、行動パターンを考えることで効率的にモンスターから逃げることができる。またモンスターを4匹まとめておき、パワーアップエアを取ることで一網打尽にすることができる。

*1:現実世界に存在するもののは機能が形を作っている。形は、必要とされる機能のために最適化される。例えば手は、掴む、挟む、押す、たたくなど多様な行動が出来るように最適化されている。木の枝を握るために親指が独立し、繊細な操作をするために指が長くなっている。そのように、現実世界における形と機能の関係性を、プレイヤーと世界との形に置き換えゲームデザインを行うことで、論理的に矛盾のないゲームが作れるという考え方。